50m走のタイムを縮めたいなら、一番最初にやるべきことがあります。
「全力で走る練習」をやめること。
意外に聞こえるかもしれませんが、これは事実です。
50m走が遅い子のほぼ全員に共通する問題は「力の使いすぎ」。
速く走ろうとして力むから、肩が上がり、腕振りが固くなり、接地がバタバタになる。
結果、全力を出しているのにタイムは遅い。
10年以上の指導で数千人の子どもを見てきて、50m走のタイムを最も劇的に変えるのは「力の抜き方」を教えることだと確信しています。
この記事では、50m走を3つのフェーズ(スタート・中間走・ゴール)に分解して、それぞれで「何をすれば速くなるか」を科学的に解説します。
50mをただ走るだけ、と思っている人が多い。
でも実際には、50mの中で体がやっていることはフェーズごとにまったく違います。
スタートから最初の10mは「加速」の区間。
ここでの目的は、ゼロからトップスピードに近づけること。
このフェーズで必要なのは前傾姿勢で地面を後ろに押す力。
体を前に倒して、重力のエネルギーを推進力に変換する。
小学生の50m走で最も差がつくのが、実はこの最初の10m。
スタートの加速が良い子は、残りの40mを楽に走っても速い。
逆にスタートで出遅れると、取り返すのは物理的に難しい。
加速が終わったら、今度はそのスピードを維持する区間。ここが最も長い。
このフェーズで重要なのは「力まないこと」。
トップスピードに達したら、それ以上力んでも速くならない。
むしろ力を抜いて、体の連動を邪魔しないことがタイム短縮の鍵。
プロのスプリンターは「60mまでは力を入れて、残りは力を抜く」と表現する。
小学生の50m走でも原理は同じ。
30m過ぎからは「力を入れる」のではなく「力を抜かない」くらいの意識が正解。
最後の10m。ここで差がつく原因は「減速」です。
多くの子がゴール前で減速する。理由は2つ。
ゴール前で体が起き上がると、前傾が失われて空気抵抗が増え、接地の角度が変わって減速する。
「ゴールの2m先を目指して走れ」と言われるのは、この減速を防ぐため。
50m走のスタートで最も多い間違いは「力いっぱい地面を蹴る」こと。
小学生に「よーい、ドン!」と言うと、ほぼ全員が足で地面を蹴って飛び出そうとする。
でもこれだと上方向に力が逃げて、前に進むエネルギーが無駄になる。
科学的に正しいスタートは、体を前に倒して、倒れる力を使って前に進むこと。
スタートの練習法
ポイント:子どもに伝えるときは「膝かっくんされて、そのまま走り出す感じ」と言うと伝わりやすい。
「よーい」の構えで、前の足と後ろの足の間隔が広すぎる子が非常に多い。
足の間隔が広すぎると、スタートの瞬間に体が「上に」跳んでしまう。
間隔は足1足分(自分の靴のサイズ分)が目安。
これより狭いと窮屈で、広いと上に跳ぶ。
中間走で速い子とそうでない子の差は、腕振りに如実に出る。
よくある指導は「腕を大きく振れ」。
でもこれ、実はあまり正確ではない。
腕を「振る」と意識すると、手先だけがブンブン動いて推進力にならない。
正しくは肩甲骨から動かすこと。
肩甲骨が動くと肩→肘→手先と連動して、自然に大きな腕振りになる。
そしてこの腕振りが骨盤を回転させ、足の回転に直結する。
つまり、腕振りは「腕のため」にやるのではなく「足を動かすため」にやっている。
肩甲骨腕振りの練習
ゴールラインでタイムが計測されることを知っている子ほど、ゴール手前で体を起こしてしまう。
無意識に「到着した」と体が判断してブレーキをかける。
対策はシンプル。
ゴールラインの先、2〜3m先を目標に走る。
「ゴールを通過する」のではなく「ゴールの先まで走り抜ける」意識。
もうひとつ効果的なのは、ゴール前で胸を前に出す「チェストディップ」。
胸を前に突き出すことで、ゴール寸前の0.01〜0.05秒を稼げます。
あなたうちの子、50m走のどのフェーズに課題があるか分からないんですが…
内川LINEに走りの動画を送ってください。3つのフェーズのどこに課題があるかをお伝えします。原因が分かれば、改善は早い。
コツを知ることと同じくらい大切なのが、「やってはいけないこと」を知ること。
以下の3つは、やっている子が本当に多いのに、ほぼ全員がタイムを落としています。
「つま先で走ると速くなる」という情報を信じて実践する子が多い。
結論から言うと、小学生がつま先接地を意識するとほぼ確実に遅くなります。
理由。つま先接地にはふくらはぎの筋力が必要。
小学生はこの筋力が未発達なので、つま先で着地すると衝撃を吸収しきれず、かえってブレーキがかかる。
さらに、無理なつま先接地はアキレス腱への負担が大きく、怪我のリスクも高い。
小学生の接地は「足の裏全体でフラットに」が正解。
地面にペタンと乗る感覚。そこから体重を前に移動させて推進力にする。
「もも上げが大事」と言われて、走るときに膝を高く上げようとする子がいる。
ももは「上げる」ものではなく、地面を押した反動で「上がる」もの。
意識的にももを上げようとすると、上下動が大きくなり前に進むエネルギーが減る。
ももが自然に上がる走りを作るには、地面を押す力を鍛えること。
壁押しドリルで「地面を後ろに押す感覚」を身につければ、もも上げは勝手にできるようになります。
50mくらいの短距離なら呼吸を止めても走れる。
だから多くの子が全力で息を止めて走る。
でもこれ、実は力みの原因になります。
息を止めると体が硬くなり、肩が上がり、腕振りが制限される。
特に30m過ぎから顕著に影響が出る。
50m走でも呼吸は止めない。
「ハッハッ」とリズムよく吐くことで、体のリラックスを保てます。
吸うことは意識しなくていい。吐けば勝手に吸えます。
自分の子どものタイムが速いのか遅いのか分からない、という保護者の方は多い。
参考までに、小学生の50m走平均タイムを載せておきます。
小学生50m走 平均タイム(文部科学省「体力・運動能力調査」参考値)
平均タイムはあくまで目安。
大切なのは「昨日の自分より速くなっているか」です。
他人との比較よりも自己ベストの更新を目標にすると、練習への意欲が続きやすい。
お子さんに「ゴールの先まで走り抜ける」とだけ伝えてください。
ゴール前の減速がなくなるだけで、0.2〜0.3秒変わる可能性がある。
これは今日から使えます。
お子さんの50m走を動画で撮ってください。
横からと正面からの2アングルあると最高です。
スタート・中間・ゴールの3フェーズのどこに課題があるか、自分の目で確認してみてください。
動画を撮って「どこが課題か分からない」と感じたら、陸上アカデミアのLINEに送ってください。
全国大会出場レベルのコーチが、お子さんの50m走を3フェーズに分解して課題をお伝えします。
練習メニューの提案もできます。
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